著者の佐藤和歌子さん(29歳)は、「焼き肉はひとりがいちばん」と説きます。私もたぶんに同感です。だって、焼き肉(特に、赤みじゃなくてホルモン類)こそ、自分のペースで、自分好みの焼き具合で食べたいもん。
ところで、私は元来「おひとりさま」で、ラーメン屋には小学校低学年から、寿司屋と焼き肉屋、モツ焼き屋には、22歳で就職すると同時に「おひとり」デビューしています。しかし、そんな私でも、これまでかなり敷居が高かったのが「ひとりモツ焼き」。なぜって、他のお客さんたち(主にオヤジ)が、「ひとりホルモン」する私に、どことなく気を遣っているのがわかったからです。
ところが、今年、ハッキリと変化を感じました。モツ焼き屋にひとりで入っても、誰も私に気を止める風もなし。私がオヤジ化しただけのことか? いやいや、これは『悶々ホルモン』効果でしょう。この本のおかげで、ひとりモツ焼き&焼き肉する女が増えた、ないし、認知されたのではないか、と拝察します。
私事ながら、私の半生はオヤジ・イメージとの闘いでした。自分でもオヤジだと自覚はしているのですが、それでは世間が許さなかったから、なんとかオヤジ的側面を他人に見せまいと努めてきた。だけど、本書を読んで認識が変わりました。今の20代ホルモンヌに較べれば、私など、オヤジの末席に名を連ねることさえ憚られます。知らないうちに、あの娘もこの娘も、私(46歳)を遥かに越えた真性オヤジになっていたのね。
二十の年齢差の重みと深さを痛感するとともに、これで、人生がだいぶ楽になったよ。
さて、『悶々ホルモン』が紹介する立石の飲食店は2軒。「宇ち多”」と「江戸っ子」です。本書には、他に関西、福岡、神奈川方面におけるホルモンの名店が紹介されています。それだけでも極めて貴重なガイドブックなのですが、何より著者のホルモン好きが素直に伝わる文章で、読んでいるこちらも幸せになりました。
私自身は、豚の内臓なら立石「ミツワ」、牛のそれなら浅草「金楽」。この2軒さえあれば、それでハッピーなのですが、しかし、『悶々ホルモン』を読んで、一軒だけどうしても行きたい店が出現しました。浅草「きみまつ」。以下に一部引用。
「一品一品のレベルが異常に高い。豚のキンタマ食わせるくせに、品がよくて、敷居が低い。油断させといて、いつの間にかヤバイ世界に連れていく感じ」
うーん、読んでいるだけで悶々する。なれど、ロサンゼルスから浅草はあまりに遠し。
あぁ、『悶々ホルモン』、出国前に日本で読んでおくべきだった……。
→「ミツワ」2008年4月30日の項、参照


